インドのデリーに滞在している。
9月初めから10月中旬までの第1期、11月中旬から12月末までの第2期、そして1月末から3月中旬までの第3期の合計137日間の滞在となる予定だ。
日本とは人も自然も言葉も違う世界である。
それぞれの滞在時期に何を感じ、何を思ったか―仕事とはちょっと離れた視点で書き留めておこうと思う。
牧野 啓二
デリーの日常に見たものは、著しい経済発展の中に存在する奥深い社会の姿だ。ヒンドゥーとイスラムが融合する世界遺産、緑広がる英国領時代の政府機関の建築と都市ニューデリーの素晴らしさ。そして、それとは全く対照的な、貧しい人たちの暮らしだった。
崩れたレンガの壁にビニールシートの屋根、そこに干される洗濯物、何もかもが露天。野菜も、果物も屋外のマーケット。料理も、床屋も外。物乞いの女の子が赤ちゃんを抱き信号待ちの車の合間を縫って車の窓ガラスをたたく。小型三輪オートリキシャが列をなす地下鉄駅前。表通りには、外国製の高級車が走る。その中を、ぎっしり人が詰まったバス、両親が子供を挟んで走るオートバイ、荷物いっぱいのリヤカー、やせこけた牛が行きかっている。